便秘、胸焼け、消化不良に役立つお腹マッサージ:内臓モービリゼーション, FuncPhysio  代表  高田洋平

こんにちはファンクフィジオの高田です。今日は胸焼け、消化不良、胃もたれ、便秘などに有効な内臓モービリゼーションのお話をしたいと思います。

先日行った Whole Foods で熱心にプロバイオティクスを探している方を見かけました。「この二つは以前試したけど効果がなかったから、今度はこっちのを試してみよう!」みたいな感じで、ありとあらゆるサプリメントを物色していました。私の想像ですが、数々のサプリメントを色々と試したものの結果は変わらず、また新しい物を買って試そうとしているといった感じでした。確かに腸内細菌を整えることも消化不良や便秘などの対策には大切なことです。しかし、私の専門分野からみると、臓器の動きをきちんと保てているか? 膨張・収縮を各臓器がキチンと出来ているか? 各臓器の開け閉めをする筋肉は硬直していないか? またストレスがかかっていないか? ということの方がより大切だと考えています。

 そこで今日は意外と知られていない内臓モービリゼーションについてお話していきたいと思います。

 あまり知られていないことですが、臓器(胃、小腸、大腸、など)を形成している筋肉は平滑筋と呼ばれ、上腕二頭筋やハムストリングなどの筋肉(骨格筋)とは違う筋肉です。またその臓器の管の開け閉めをしている括約筋も同様に「筋肉組織」です。例えば胃を例にとってみますと、胃の外側は平滑筋、そして内側が消化に必要な粘膜組織で出来ています。そしてその入口と出口は括約筋でコントロールされています。要するに内臓の大部分が筋肉なのです。小腸や大腸にしても同じです。平滑筋も括約筋も骨格筋とは多少構造は違いますが、同じ筋肉組織であることは間違いありません。この筋肉組織が収縮したりリラックスしたりするおかげで消化物を混ぜ合わせたり次の臓器に送り出したりとかが出来るわけです。

 さて筋肉組織ということは、肩こりと同様、硬くなったり、凝ったり、癒着したりすることがあり、そのために組織の動きが悪くなり、血流が落ち、本来の臓器機能を失ってしまうことが少なくありません。本来であれば呼吸や運動を通しして自然と「マッサージ」などが行なわれ、その組織の恒常性を保っています。呼吸を行なう横隔膜は、その1日2万回以上行なわれる呼吸のなかで内臓を常にポンプのように「マッサージ」し続けています。さらに歩いたり体を捻ったりという運動(動き)も良い「マッサージ」効果を内臓に与えています。

 ところが過去の「呼吸」の記事でも触れましたが、昨今その普通の呼吸が出来なくなってしまっている人が多いです。その記事内で触れたように“横隔膜が主体となって胸郭全体が広がる呼吸”が正しい呼吸です。しかし、横隔膜をうまく使えなくなってしまうと横隔膜ポンプが使えず、内臓への「マッサージ」がうまく行なえず、血流の低下や組織の停滞が起こりやすくなってしまいます。よく足がむくんだりしますが、内臓も動きが止まるとリンパ液や体液などが停滞し、むくんだ状況になります。正しい呼吸が出来ていないということはこうした内臓器官にも影響を与えているのです。さらには、現代人は慢性的な運動不足に陥っていますので運動からくるマッサージ効果もほとんど無くなってしまっています。例えば座っている時は当然こうした運動による「マッサージ」効果が無く、臓器の停滞が起こりやすいです。職場、学校、家などで1日の大半を座って過ごす方は要注意ですよ。さらにいうと手術後、外傷、胃炎や腸炎などによる繰り返しの炎症によって出来る組織の癒着などがある場合、専門用語で瘢痕組織(はんこんそしき)と呼ばれるものができ、臓器の動きは著しく制限されますので特に要注意です。

 こうした癒着や内臓の凝りなどに有効な方法として内臓モービリゼーションがあります。内臓モービリゼーションとは徒手療法の一環で内臓器官の正常な動きを回復させるために生まれた医療技術です。アメリカではライセンスを持ったフィジカルセラピストやマッサージセラピストなどが行なえます。われわれセラピストの中には特殊な内臓モービリゼーションのトレーニングを受け、便秘、生理痛、胸焼け、胃もたれなどの内臓器官の問題を薬などに頼らず自然な形で回復させる技術を身につけているセラピストがいます。もしそのような症状などでお悩みで、内科医に診てもらったけれど根本的な解決に至っていないという方がおられたら、もしかしたら臓器の動き自体に問題があるのかもしれませんよ。その場合専門のトレーニングを積んだ医療従事者にご相談ください。

 さて、ここでは自分でも出来る簡単なお腹マッサージをご紹介します。ダイエットのための「お腹マッサージ」などは良く耳にしますが臓器を健康に保つためにも臓器を動かしてあげることはより大切なことです(図1)。

 ここで紹介した自分でもできるマッサージは特殊なものではありません。どちらかと言えば疲れた内臓や滞っている臓器を健康に保つためのものだと思ってください。そのため癒着や特定の臓器の硬さなどが存在する場合の「治療」効果は期待しないでください。

 お腹周りの筋肉や組織を柔らかく保つということは大変重要なことです。同時に適度な運動を取り入れ、かつ正しい呼吸法を整えることで、食道、胃、小腸、大腸などの動きが良くなると消化器官全体の機能も活発化されあなたの今悩んでいる身体の問題の解決につながるかもしれません。       

図1

YouTube で簡単な内臓マッサージ方法をご紹介します。興味のある方はぜひ下のリンクにアクセスしてください。または Google で「ファンクフィジオ  内臓モービリゼーション」と検索してください。