あまり知られていないアゴの問題、顎関節症(がくかんせつしょう)について

こんにちはFuncPhysioの高田です。今回はあまり聞きなれない顎関節症について書きたいと思います。顎関節症の症状とはアゴのクリック音やアゴの歪み、開口と閉口の制限や開閉時のカクカクした動き、アゴの痛み等です。例えばアゴが痛く片一方の歯でしか噛めないといった症状は顎関節症です。しかし実際はアゴの痛みだけではありません。顎関節は首(頚椎)、頭蓋骨(頭の骨)、口腔内の構造、顔の感覚とつかさどる三叉神経(さんさしんけい)、自律神経、さらには耳の構造などと密接な関係がありますので症状がアゴだけに出るとは限りません。

このあまり聞きなれない顎関節症ですがその割合は非常に多く、日本の統計では人口の約75%が顎関節症の兆候(顎の異常な動き、クリック音、圧痛)があり、人口の約33%が実際に顎関節症をわずらっているとされています。特に女性の方が男性より2−3倍発症率は高くなっています。しかし実際に治療を受けている人の割合は約3.6−7%に留まっています。なぜ顎関節症に対して治療を受けている人がこんなにも少ない割合なのか?その理由は①疾患に対する世間の認知度の低さ:②他の症状と見分けがつきにくい:③顎関節症を治療できる医療従事者が少ない。と、この三点だと考えます。

まず①ですがアゴのクリック音や異常な動きは痛みの症状は出ていない状況ですので疾患だと気づいていない人が多いです。本人の自覚症状もなければ世間の疾患に対する認知も低いので問題があると認識している方が少ないです。しかしながらこうしたアゴのズレなどの兆候が何十年も続くと実際に痛みや他の症状を引き起こしていきます。早期に発見し対策をしていくのが得策です。

②の問題ですが、アゴの歪みからくる症状がアゴに出るとは限りません。冒頭で話したように顎関節周りは様々な組織が入り乱れています。ここでその全ての症状をあげるのは無理ですが、例えば、原因不明の耳鳴り、頭痛、首痛なども顎関節の問題で起こることが少なくありません。アゴに症状がでていないからアゴの問題だと気づく人は少ないです。

残念なことに③関してですが顎関節症を認知している医療従事者が非常に少ないです。例えば症状が酷く手術が必要というところまで行くと外科医や専門の歯医者さんなどはいます。しかしながら、クリック音がする、アゴが歪んで開くなど異常があるだけですと例え医療従事者に相談でしても治療方法があまり知られていないため「普通に起こること、しょうがないこと」などで済まされてしまうことがほとんどです。悲しいことですが、実際私の持っているPhysical Therapyの教科書にも「70−80%の人がクリック音や歪みなどを持っているがそれは普通のことである」という記載になっています。結果的に年齢を重ねていくうちにアゴの痛みを発症したり、改善されない慢性的な肩こりや頻繁に生じる頭痛などに悩まされている人は多くいます。

顎関節症の原因としては噛み合わせのズレ、外傷、悪い姿勢、頚椎(首)の問題、呼吸の問題、歯ぎしり、ストレス性の筋肉の緊張等様々な原因があります。よってしっかりと原因を理解した上での治療が必要です。一般的に知られる治療としては 温熱・寒冷療法、非ステロイド性消炎鎮痛剤、マウスピースやスプリントによる矯正治療、注射や外科手術などがあります。もちろんそうした治療も効果的です。だだこうした治療方法は最終的にアゴに痛みが出て生活に支障が出てからのものになります。より早い時点で頚椎や頭骸骨の問題から解決し、根本的な問題を取り除いていくことが最も望ましいです。早期に問題に気づき、アゴの問題を引き起こす原因を突き止める評価を行い、専門的な知識に基づいて徒手的、運動的に口外、口内からのアプローチ、さらには頭蓋骨や頚椎などの治療を重ねていくとほとんどのケースで治ります。

顎関節症の原因は様々であり、一人一人に合った治療が必要です。 顎関節症の症状またはその兆候がある方、頭痛や肩コリに悩まされ頻繁にマッサージに行くが短期的な改善しか得られないという方、顎関節症を専門に診れるセラピストにしっかりと原因を突き止めてもらい治療を受けることをお勧めします。