かかとの痛み:足底筋膜炎自分で出来る簡単解決法

 こんにちはファンクフィジオの高田です。10月に入りニューヨークも涼しくなってきましたね。スポーツの秋、ニューヨークの一大イベントといえばニューヨークシティマラソン! 今年で「10回目!」という方から今年「初参加!」という方まで幅広い方々が大会を楽しみに練習に励んでいるのではないでしょうか? 同時にランニングなどの練習量が増え怪我をしやすい時期でもあります。ファンクフィジオにいらっしゃるランナーの方の怪我で多いのが、膝、股関節、そして足です。今回はその中でも足、特に踵(かかと)の痛み、足底筋膜炎についてお話しさせていただきます。足底筋膜炎は運動を全くしない方も悩みを抱えている方が多いので、ランナー以外の方にももちろんあてはまります。

図1:典型的なゴルフ足底筋膜炎箇所。ここをぐっと押して痛みがあれば足底筋膜炎の疑いありです。

 足底筋膜炎の典型的な症状は、触った時の痛み、またしばらく座っていた後や寝ていた後に体重をかけた一歩目に生じる痛みです。主に足裏のかかと部分に痛みが発生する事が多いですが、土踏まずや母指球のあたりに痛みを感じる場合もあります(図1)。また走り出したり、歩き出してしばらくすると痛みが軽減するという特徴があります。この独特の症状のため、特にランナーなどは痛いけれど走り出すと痛みが軽減されるため、我慢してしまい、症状が酷く悪化し、激痛により立つのも困難というところまで放置してしまう人が大変多いです。現在のところわかっているリスク要因としては、①足首の背屈制限;②BMIが高く(太りすぎ)運動をしない;③立ち仕事が多い;④扁平足または甲高の足が挙げられます。心当たりがある人は①から③までの要因の中には自分で改善できる事が多いと思いますので、今からでも心がけて、リスク要因を少なくする努力をしてくださいね。

図2−1:足底筋膜炎マッサージ。指などでマッサージしても良いですが足の裏の組織は強くできています。ラクロスボールなどを使うと効率的ですよ

図2−2:このようにボールの上に足を乗せ、軽く体重をかけながらゆっくりとマッサージしていくと効果的です。はじめは痛いかもしれないですが徐々に痛みが取れてくるはずです。

 足底筋膜炎に対する対処方法ですが、腱鞘炎、筋膜炎、捻挫などに共通に言えることですが、一番大切なのは初期炎症を早く抑える正しい処置をすることです。ただし一時的に直っても繰り返し起きる場合は、何かしら原因があり、その原因を取り除かない限りは何回もぶり返したり、慢性的になってしまったりします。そして数ヶ月、数年と問題が長引いてしまった慢性的な足底筋膜炎は大変厄介です。筋膜炎(筋肉の炎症)と名前がついていますが実際は腱の炎症です(腱鞘炎)。腱鞘炎は筋膜炎よりも治りづらい傾向があり、酷い人だと何年もこの症状に悩まされたり、良くなったり悪くなったりを繰り返し何十年と痛みを抱えている方が少なくないです。慢性的になると、組織も弱くなって、血流も低下してしまい自然治癒が出来づらくなってしまいます。痛みの原因となる問題も単なる炎症による痛みから組織損傷や組織疲労による痛みになってしまい、炎症は起きていないけれど痛みが出るという大変厄介な状態になってしまいます。こうなってしまうと、痛み止めやアイシングなどでは良くならないという負の連鎖に陥ってしまうのです。さらに進むと骨棘(コツキョク)と言われるカルシウムの沈殿によるトゲなどが形成されてしまうこともあり、その際は外科的な治療が不可欠になってしまうことも多々あります。

 ここでは自分でも出来る足底筋膜炎に有効な簡単なエクササイズ方法をご紹介します。

図3−1:ふくらはぎのストレッチ。色々なやり方がありますが、図のように壁などを使ってストレッチをしてあげると効果的です。

1 停滞組織をほぐす

まず、ビルの2階から飛び降りてカカトを打つけたといったことでない限り、足底筋膜炎は急には起こりません。体の不バランスのため日常的に体の一部にストレスがかかり、そして繰り返されるストレスから繰り返し組織ダメージが起き、組織の癒着、組織疲労が蓄積されていきます。そうなってくると本来であれば組織をきちんと直す能力を体は兼ね備えているはずなのですが、負担の蓄積によりそれが機能しなくなってしまいます。私はこれを「組織の停滞」が起きていると呼びます。これは組織が硬くなり、血流が減り、組織が貧弱化し、回復力が下がり、怪我をしやすく、そして治りづらい状況を指します。ですので、まず外部からの力で組織を動かしてあげることが大切です。それによって 硬くなった組織をほぐし、血流を回して組織が治るための環境づくりをしてあげるのです(図2)。

2 ストレッチ

図3−2:ハムストリングのストレッチ。

要因①でも挙げたように足首の背屈制限は足底筋膜に負担をかけ炎症を引き起こします。足首の背屈制限はふくらはぎが硬いと起きますので普段からここをよくストレッチをしていくことが大切です。ただし、ふくらはぎのストレッチだけでは十分ではありません。体は全て繋がっています。ですので、筋膜の流れであるハムストリングや腰回りのストレッチも大変重要です(図3)。

図3−3:骨盤周りそして背中のストレッチ。このように部分的(で)はなくかかと、ふくらはぎから繋がる組織全体をストレッチしていくことが重要です。

この2つのエクササイズを行なうことによって、体の本来持っている自然治癒力で組織を健康な状態に導くことができます。しっかりと血流が行き通り、正常で健康な組織を保つこと、そしてリスク要因に対してアプローチを行なうことをすれば、薬などに頼らなくても安全で、再発の恐れがない、そして最も自然な方法で体を治していくことができます。もちろん、状況によっては足病医、整形外科でPRP (Platelet Rich Plasma) やステロイド注射などの治療を必要とする場合もあります。また靴の中に入れるインソールでサポートしてあげることも必要な時もあります。しかし極力自然な方法で問題の根本解決を目指し、治療していく方法をまず試していただきたいと思います。それでもダメな場合は、次のステップの治療方法を検討するのが良いでしょう。

 ファンクフィジオには、特にこの時期に、怪我に悩む多くのランナーが訪れます。特に大会2~3週間前に踵が痛い、膝が痛いと来られるランナーが多いですが、トレーニング最終時期になって出てくる痛みというのはその蓄積も相当なことが多く、根本的に問題を解決するには2~3週間では時間が短すぎることも多々あります。我々もベストは尽くしますが、短期的には対処療法のアドバイスぐらいしか出来ないこともあります。

足底筋膜炎を発症している方、またはその予備軍の方の組織を触診すればその組織が健康なのか「組織の停滞」状態かは解ります。痛みになる前に対処していくことが一番の予防であり治療法です。ですので、足に異常を感じたら、「あれ?」と思ったら早めにご相談することをお勧めします。

 ニューヨークシティマラソン参加の皆さま、最終調整時期ですが怪我をせず、大会を楽しんで来てください!!

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