ゴルフエルボー?vsテニスエルボー?

今回は「肘が痛いのだけど、どうしたらいいか?」という質問に答えていきたいと思います。

肘は腰に次いでアマチュアゴルファーが故障を起こす場所です。

ゴルフ肘、テニス肘とういう言葉を聞いたことがあるでしょうか?手のひらを上に向けた状態で肘の内側が痛むのがゴルフ肘、外側が痛むのがテニス肘です。とはいえ、右打ちのゴルフファーの多くが痛めるのは左肘の外側、つまりテニス肘で、少し違和感のある言葉遣いですね。

その対処法については痛みが急性なのか慢性なのかによって大きく違ってきます

急性の場合。例えばゴルフ中、ゴルフ直後に痛みが伴う場合です。これは急性の炎症がおきている場合が多いので、氷で冷やすのが一番です。氷をあてて20-30分念入りに冷やすことを一日に数回繰り返しましょう。そして安静にしていましょう。

慢性に陥ってしまっている場合の方が対処が大変です。痛みが始まってから2週間経ってもまだ痛みが取れない、普段は問題ないけれどゴルフをするたびに痛む、などが慢性の症状です。こうした場合、傷めた組織が炎症→組織の修復→完治といった治癒サイクルがうまく行われず、組織が治りそこね、痛みが残っているケースです。

図1eccentric loading

この慢性の場合、「ゴルフをしないで治るまで安静に」といったアドバイスが多いようですが、よほどひどい状態で無い限り、私は反対です。なぜなら、1-2ヶ月安静にしていても、それで直るケースは少なく、安静時には痛みがなくても、次にゴルフを行った時に同じ痛みが再発することが多いからです。また6ヶ月以上もゴルフをするなというのはゴルフ好きにとって非現実的なアドバイスです。では肘の傷みが慢性化した場合はどのようにすればよいのでしょうか?私は適切なマニュアルセラピーそして効果的なリハビリの導入が一番だと考えています。こうした慢性時のゴルフ肘またはテニス肘に対して、筋が伸ばされながら収縮 を行う、伸張性収縮運動が最も効果的なリハビリだといわれています。今回は家でも出来る簡単なエクササイズを一つ紹介しますので参考にしてみてください(図1)。

ステロイド系の注射などは慢性的痛みにはあまり効果的ではありませんので注意しましょう。近年ではPRP(platelet rich plasma therapy多血小板血漿療法)といった新しい治療方法もありますが、まず、注射やメスなどを使わないPhysical Therapyなどの非侵襲的治療を試してみることがお勧めです。

図2カッピングチキンウィング

さて、急性にしろ慢性にしろ痛みが一段落したら、何故肘の筋を痛めるのかということに目を向けなければなりません。一日何百球も打つために問題が起きるケースもありますが、これはほとんどプロの場合です。アマチュアの場合、ゴルフスイングまたは身体能力に問題があり、ゴルフボールを打つたびに肘に負担がかかり怪我をする、ということが大半のケースです。ですから、その問題点を取り除いていかなければ、せっかく治ったとしても、ゴルフをするたびにまた傷めるといった悪循環が起きてしまいます。肘に負担のかかるゴルフスイングの例としてはカッピングやチキンウィング(図2)、さらには前月号で紹介した腕を突っ張ったままのスイング、などがあります。また、身体能力の問題がスイング欠陥を生み、肘に負担をかけることも少なくありません。例えば肩の外旋可動の欠陥。図3のテストをしてみてください。もし、パスできない場合はカッピングやチキンウィングなどのスイング欠陥が生まれやすくなり、必然的に肘に負担をかけることになります。

図3肩外旋可動てすと

このようにゴルフで起きる怪我の多くは、スイング欠陥、そしてそれを引き起こす身体能力欠陥と因果関係があります。そのため、痛みへの対症療法だけではなく、根本からその原因を発見して治していくことが大切なのです。

図1
用意するものウォーターボトル、ロープ、短い棒。図のようにロープをウォーターボトル、棒に固定し、体の外側からロープが垂れるよう巻きます。肩の高さまで棒を上げ、ゆっくりと手首を使いおろしていきます。ボトルの重さは、水の量で調節してください。出来るだけ重いほうが良いですが10回を3セットできる程度に調節します。もし後日痛みがひどくなる場合は専門家に相談しましょう。

図2カッピング
インパクト時に左手首が外側に折れてしまうこと。
チキンウィング
フォロースルーで左ヒジが引けてしまうこと。

図3
図のようにアドレス時の前傾姿勢をとり、肘を肩のラインと水平になるように上げます。肘を90度の角度に保ったまま、どれだけ腕が外側に回転できるでしょうか?背骨のラインを超えることが出来らパス、超えなかったら肩関節の外旋稼動範囲に問題があり、スイング欠陥を招く恐れがあります。上体を起き上げたり、背骨を反らしたりしないようにしてください。