今月は「スイング中、腕は伸ばしたままにしないといけないのだよね。」という質問に対してコラムを書いていきたいと思います。
「ゴルフに意義あり!」というタイトル通り、スイング理論に意義を唱たいと思います。始めにお断りしておきますが、私はゴルフスイング理論に関しては専門ではありません。トップの位置ががこうあるべきだ、ダウンスイングにおいてのクラブの軌道がこうだ、というようなことには特にこだわりがありません。機能的に体を使い、自身の骨格や身体能力に合った、コンペンセイションの無いスイングが良いスイングだと考えております。しかしながら、スイング理論を説くレッスン書に従うことで、非常にポテンシャルのあるプレーヤーが伸び悩んだり怪我などに陥ったりするのをみていると、どうしてもレッスン書などのあり方に意義をあり!です。
「ゴルフ誌のレッスンに意義あり!」
近年レッスン書などが増え、様々なスイング理論に触れる機会も多いかと思います。それらは「最新ゴルフ理論」などと称するのであたかも万人に共通するかのように思わせがちです。しかしながらここに落とし穴があります。なぜなら、スイングにはタイプがあり、個々の身体能力は異なってくるからです。ですから、万人に当てはまるスイング理論などあるはずが無いのです。例えば、前月号で触れたように、スイングはone plane swing(ベン ホーガンなど)そしてtwo plane swing(ジャック ニクラウスなど)に分けられます。そして、スイング中のフィーリング、身体の使い方、クラブの動きは、スイングのタイプによって大きく異なると話しました。ベンホーガンとジャックニクラウスのレッスン書を手にとって読み比べると、グリップの握り方一つとってもその教え方が違うことに気づくはずです。
しかし、レッスン書は「このレッスンは、こういったスイングを目指している人に限ってお勧め」とはいちいち書いてくれません。そのようなゴルフレッスンを唱えているプロなどは、アマチュア(一般の方)が、股関節が動きづらい、首が回りづらいといったといった、個々の身体能力に問題があることには目を向けません。プロは、自分の身体で出来ることは万人で出来ると思っていることが少なくないのです。
さらに、レッスン書は個人の感覚の差も考慮していません。人間の身体が備えている感覚神経はとても敏感で、たった数ミリの重心位置の変化も感知できますが、その敏感さは個々によって違うのです。ですから、二人のプレーヤーに、同じ様に「こんな感じで」と教えても、一方では「どこも変わってないよ」、また一方では「それはやり過ぎ」といったことが起きてしまうのです。
このような、身体能力やスイングのアセスメントも無しに、本の向こう側にいる相手に単一的に「Aという感じでクラブを振ります」というレッスン書、雑誌は問題です。
「良きコンシューマーになれ!」
上述したレッスン書の“万人に共通する”と思わせる書き方のせいで、あなたのスイングに害がもたらせることが多々あります。もちろん、著者はあなたのスイングの向上につながると信じてアドバイスをしているのでしょう。しかし、あなたの身体能力、スイングは決してその著者のものとは同じでないことを認識すべきです。例えば、冒頭の質問の様な、スイング中「肘は曲げない」「腕は伸ばしたまま」といったレッスンです。これに従い無理に肘を突っ張ったままスイングしようとし、むしろスイングがバラバラになってしまっているアマチュアを非常に多く見かけます。運動学的にみても、腕を伸ばしたままというのはとても非効率的は動作です。他のスポーツを見てください。野球、テニス、卓球、ボールを打つ動作で腕を伸ばしたにするスポーツは無いでしょう。金槌で釘を打つときも、肘を突っ張り、手首を固めたまま打つ人はいないですね。そもそも、「この腕を伸ばしたまま」という教えは、ありあまる柔軟性を抑え、パワーを犠牲にしてもスイングのバラつきを無くす為に、なされているものです。例えば肩幅が広く、手足が長く、柔軟性に飛んだ身体能力を持つプレーヤーには、スイングの軌道を安定させるということで適切なアドバイスなのかもしれません。しかしながら、手足の短いわれわれアジア人には向いていないアドバイスといっても過言ではないでしょう。石川遼選手のダウンスイングを見てもわかるように、うまく腕のしなりを使ってパワーを出していることに気づくはずです。
ではどうしたらよいか。こうした多々存在するアドバイスの中から、自分に役立つ情報だけを取り入れる能力を身に着けるべきです。この連載の中で繰り返していますが、その為には、自分の身体能力そしてスイングの分析が不可欠です。まず、自分はどのような身体能力の持ち主なのか(問題点も含め)、そしてどのようなスイングの持ち主なのか知ることです。そして、レッスン書などを目にしたら、「あ、これはこうしたスイングタイプにあうレッスンだな」「その為にはこうした身体能力が必要だな」と洞察する力を身につけるのです。そうすれば自分に合うアドバイスだけを選ぶことが簡単になってきます。あなたのスイングの向上につながる情報だけを集め、それを実行していく。それがゴルフ上達の近道になるはずです。