インパクトはアドレスの再現??アドレスとインパクトの違い

先日、マンハッタンにあるX-drive 495で行われたカーク小栗プロのレッスン会を見学して来ました。コンピューターやビデオカメラなどの技術を使ってスイングやボールの軌道を分析すると、どのような問題が自分のゴルフスイングにあるか一目瞭然で、改めてこうしたテクノロジーを駆使したレッスンの大切さを認識しました。

さて、見学した際、最も気になったのが、参加された生徒の方の多くが、インパクト時のポジションを勘違いしているという点です。具体的には、「インパクトはアドレス時の再現」という考えを持っている方がとても多く、カークプロに指摘されていました。この表現は、何時どこの誰が言い出した表現かは知りませんが、間違いです。そして、無理な体の動きをもたらすので、変な癖が身についていしまい、スイング全体がバラバラになってしまいます。

図1Dustine Address and impact

私は、身体機能、スポーツトレーニングの専門ですので、この視点からなぜ間違いかについてお話していきたいと思います。その前にまず、すべてのスポーツに共通することですが、ゴルフのパワーの源は下半身であるということをご理解いただきたいと思います。投げる、ラケットを振るといった上半身主体のスポーツにおいてさえ、上級者・プロは60-70%のパワーは下半身から生みだし、骨盤、腰、肩といった順に腕に伝えていっています。このことはフォースプレート(プレート上にかかる力など分析し、重心動揺を計測する機械)を使った重心移動の分析においても、立証されています。上級者・プロは上半身の動きに先行して必ず下半身•重心移動を行っています。言うなれば下半身の動きがが上半身をリードしているわけです。そして上級者になればなるほど、重心移動は早く、動きはダイナミックなものとなるわけです。ですので、ゴルフにおいては、下半身主導の体重移動がトップスイングからダウンスイングにかけて激しく行われますから、スイング軸がアドレス時に比べると、インパクト時では飛球線方向に大きく動くのです。この結果、インパクト時にアドレスの再現をすることは不可能となってしまうのです。図1はDustin Johnsonのアドレスとインパクトの写真ですが、手の位置、背骨の角度、などその違いが一目瞭然ではないでしょうか?

では、下半身主導でパワーを生み出すスイングを行う為には,どのような身体能力が必要不可欠なのでしょうか。最も大切となってくるのはDissociation能力(身体の各部分を単独に動かせる能力) です。簡単な例としてはダンサーなどが腰だけ上下左右に動かして踊ったり、首だけ動かしたりして踊りしますよね。そうした上半身または下半身を別々に動かせる身体能力がゴルフにおいても大切になってきます。図2のテストを鏡の前で行ってみてください。こうした能力は、単に体が硬い、筋力がないといったことではありません。簡単に出来る方は「何が難しいの?」と感じると思います。逆に出来ない人は「よく意味がわからない、難しい」と感じるのでないでしょうか。

図2下半身Dissociationテスト

トップスイングから下半身主導にパワーを生み出すためにはこのDissociation能力は不可欠なのです。こうした基本身体能力がないと、いくら頭で「トップから下半身リードで振る」とイメージさせ、実行させようとも、スイングには反映されません。また、いくらボールを打ったところで直りません。エクササイズやトレーニングを通し、まず身体に動きを覚えさせ、何度も反復練習しながら自分のスイングに反映させていかなくてはなりません。

私はスイングの専門家ではないので、具体的に、どのようなスイングが正しいのか?どのような練習をしたら良いのか?ということはお答えできません。それはプロからのレッスンなどを通し、ゴルフスイングを理解し、一つ一つゴルフスイングの問題に取り組むことが上達に繋がると思います。

図1  Dustin Johnsonのアドレスとインパクト

図2 下半身Dissociationテスト
まず5番アイアンを構えるように前傾姿勢をとります。その上体から頭、上半身は動かさず、骨盤を右そして左へと回転させてください。頭や上半身が動いたり、骨盤がギッコンバッタンと上下に動いたりしてしまった場合、Dissociationに問題があります。