PT, フィジカルセラピーってなんですか?

宮崎プロ(M): 高田先生、前回の理学療法士さんってどんなことをしてくれるの?という話大変参考になりました。先生は身体の各関節・筋肉の動き・重心の位置だとかを分析し、それらを治すスペシャリストというのがとても良くわかりました。高田先生はゴルフ競技者を専門的に診ますよね。先生はゴルフスイングを教えたりしないの?

高田(T): いえ、私はスイングを教えたりしません。スイングの軌道がどうこうということ見ているのではなく、生徒がスイングをするときどのような身体の動きをしているか? 例えば身体のどこが上手く使えていなくて、どこに負担がかかっているのかを診ます。身体の状況を元に「こうしたスイングはあなたには出来ませんよ」とか「こうしたスイングをしたいのなら身体のここの部分を治す必要があります」といった治療や指導をします。だからゴルフスイングやクラブの軌道を直したりということは太輝プロにお任せです 。

M:なるほど。でも実は私、レッスンするときにたまに困ることがあるんです。

T: どんなことですか?

M:例えば、『高いトップ』を作くろうとします。もし関節の動きに制限がなかったりすると簡単に指示通りの『高いトップ』の形ができたりするのです。ですが、肩周りの筋肉が固まってしまって、やってほしい身体の動きが全くできないという人もいるわけです。そういう人は理想的な身体の動きが出来ないので、それに近い動きへと調整することしかできません。身体に無理をしてスイングを作ろうとすると怪我のリスクが上がってしまうかもしれない。そしてパフォーマンス(ボールが遠くに飛ばない・良いスコアが出せないなど)の向上が望めないということです。

高いトップ

T: なるほど、無理にスイングを作ろうとして、むしろ自然な身体の動きを害するというわけですね。よく熱心にスイング理論を探求される方、また形だけにこだわったレッスンを受講されている方に多くみられる傾向ですね。スイング作りに熱心なのは良いことです。しかし大切なことは身体ができないことをスイングで求めてもそれはできません。

M: 確かに我々はスイングの形をみてレッスンをすることが多いです。コンピューター上で腕の角度などを分析しながらレッスンするのも最近の傾向です。

T: 例えば上の例をとってみると次のようなテストをしてみてください(図1参照)。背中を反らさずに手が壁に簡単に着くぐらいの肩関節の可動域が無ければ「高いトップ」を作るのは不可能です。

図1;低いトップ

M: なるほど、こうやって身体の動きを分解してみてみるとわかりやすいですね。

T: 一人一人の身体は違う。だからTVや雑誌に紹介されているインストラクターのアドバイスが万人に通用するというわけではありません。そこに気が付かないとゴルフは向上しません。スイングはファンクショナルで効率的な身体の動きでなければなりません。一人一人の身体に合ったスイングを見抜きそのスイングに近づける取り組みをするのが太輝プロ。ゴルファーの身体能力の向上をお手伝いするのが私です。お互い協力し合って皆さんのゴルフが向上するように働きかけましょう。

M:そうですね!高田先生と私が協力すれば今までよりもより高いレベルでのゴルフレッスンが出来そうです。次回は練習についてもう少し踏み込んだ話をしたいと思います。

図1:肩の可動域テスト

まず図のように肩幅に足を開き軽くヒザを曲げます。背中をベタッと壁につけ背骨が浮かないように腕を上に上げてください。そのまま背中が浮くこと無く手が壁に着けばオッケーです。手が壁に届かない、または背中が浮いてしまう場合、ゴルフスイング中に「高いトップ」を作るのは不可能です。

肩の可動域テスト
宮崎太煇プロ

宮崎 太輝/Taiki Miyazaki 

Biography:  アメリカ式ゴルフスイングとトレーニングを学ぶために渡米。NY市立大学大学院でEercise Science & Rehabilitationを専攻し、より効率よく新しい身体の動きの習得を促すために運動学習の分野を研究。東京でプロやインストラクター・ゴルフトレーナーに向けてゴルフスイングや運動学習的指導法の講習会を行った経験を持つ。