前回の記事ではテイクバックについて書きました。

今回は、テイクバックからトップにかけての身体の回し方について学びましょう。

ゴルフの飛ばしに必要な要素の一つに、スイング中に上半身と下半身が捻転するということがあります。身体を捻転したとき、私達の体幹の筋肉はストレッチされますが、このストレッチの度合いが、ゴルフクラブを振るときのスピードとパワーに影響を与えるからです。

図1

どのような練習によってスイングの向上を図るかお話しする前に、筋繊維の特徴について触れたいと思います。筋肉は脳からの電気信号を受けて収縮します。この筋肉の収縮運動によって私達は身体を動かすことができます。筋繊維には特徴がありその長さの状態によって収縮時に発揮できるスピードとパワーに違いがでてきます。例えば、筋繊維が『たるんだ状態』、『普通の状態』、『少し伸びた状態』、『伸びきった状態』の中では、『少し伸びた状態』が最大限のスピードとパワーを生み出せるといわれています。このような筋肉の性質をゴルフスイングに応用すると、トップスイング時に筋肉が適度にストレッチされた状態が、最もダウンスイングでスピードとパワーを生み出せるということになります。そこでバックスイング時には体幹を適度に使ってクラブを上げ、適度なストレッチを生み出すことが大切になります。腕だけでゴルフクラブを振り上げてしまうと 体幹の筋肉をうまく動員すること が出来ません。だからといって、バックスイング時に無理に身体を捻ってしまい、筋繊維を伸ばしすぎてしまってもスピードとパワーは得られません。バックスイング時の捻転で体幹の筋肉が軽くストレッチしているのを感じられれば十分です。この状態生み出すトップスイングを作ることが最も効率的にゴルフクラブを振るコツなのです。

図2

さて筋繊維の特徴を理解したところで、正しい身体の回し方を学び、トップで体幹の筋肉の適度なストレッチを感じてみましょう。

図1のように、背骨を傾けた構え(ポスチャー)を作ります。胸の前にクラブを構え、前傾し、そこから下半身の形が変わらないように気をつけながら上体を右に傾けます。この斜めに傾けた背骨が捻転の軸になるので、この構えからの身体を捻転してみましょう。

図2のように右足の内側にクラブを置き、胸の前にもクラブを両手で持ちます。ここから胸に持ったクラブが右足元に置いたクラブと平行なるように状態を捻転します。身体がかたい方は70度ほど捻転できれば十分です。体幹の筋肉が適度にストレッチできれば良いので無理に胸と足元に置いたクラブを平行にする必要はありません。

図3

この形を作るときの注意なのですが、勢い良く身体を捻転しないようにしましょう。筋肉の束の中には、急なストレッチによって筋繊維がダメージを追わない様、自発的に筋繊維を収縮させる器官があります。ですから勢い良く身体をまわしてしまっては、身体は反射的に筋肉を収縮させるため適度なストレッチを与えることができません。鏡を見て傾けた背骨の軸を意識しながらゆっくりと身体を捻転させることがコツです。

図4

身体の捻転の仕方がわかったところで、トップの形を作ってみましょう。先ほどのように身体を捻転し、一旦胸に持ったクラブを置いて左腕を肩からダランと垂らします(図3)。左腕を脱力できたら、腕を地面と平行より少し高い位置まで持ってきて、手の平をシャフトプレーンと同じ角度に傾けます。最後に左手のひらと右手のひらを合わせたらトップの形の完成です(図4)。最初はクラブを持たずに練習し、形を覚えることができたらクラブを握って同じトップの形を作ってみましょう。正面からみてグリップが胸の正面にあり、後方からの視点ではグリップが右肩を隠し、シャフトがシャフトプレーンと平行になっていれば捻転がきちんとできたオンプレーンなトップができます。

このように、筋繊維に適度なストレッチをかけるように身体を捻転できるようになるとダウンスイングからフォローにかけて、よりスピードとパワーをスイングに加えることができます。無理をしない、よりシンプルな身体の捻転を覚えて、もっと簡単にボールを飛ばせる身体の使い方を身に着けましょう。

宮崎太煇プロ

宮崎太煇 Biography
日本での学生時代、テキサスのハンクヘイニーゴルフランチにて当時世界最先端のスイング理論を学び、渡米を決意。NY市立大学院でExercise Science & Rehabilitationを専攻し、より効率的に新しい身体の動きを習得するための運動学習の分野を研究。USGTF、AFFA、フィットネスインストラクター。Port Washingtonにインドアゴルフスクールで絶賛レッスン中。質問がある方はt.miyazaki.agi@gmail.comまで

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