雪が多かった今冬のニューヨークにも、2011年ゴルフシーズンが到来しました。この月1回のコラムでは、「ゴルフが上手くなりたい!、もっと楽しみたい!」と思っている皆さんの質問に答えながら、ゴルフに関するさまざまな話題を取り上げていきたいと思います。私はPhysical Therapistですので、主な切り口は身体能力とゴルフスイングの関係、トレーニングまたは怪我になりますが、もちろんその範囲を超えて扱いたいと思います。
今回は、私自身の経験を通して、ゴルフの向上の鍵についてお話したいと思います。私は2年前までは80台中盤プレーヤーでした。ところが、これから述べる取り組みをしたところ、2010年のシーズン中にはUSGAハンディキャップが1・1まで向上しました。そこで今回は、皆さんのゴルフ向上のお役に立てばと、取り組みの方法を紹介させていただきたいと思います。
そのプロセスですが、単に「ゴルフがうまくなりたい!」と、漠然とボールを繰り返し打ったり、また、ジムに行き闇雲にエクササイズすることは効果的ではありません。大切なのは、自分の問題点を理解し、目標を定めて一つ一つ解決していくことです。そのための最初のステップとして最も重要なことは自分のゴルフの分析です。
分析は、1身体能力、2スイング、3ゴルフクラブ、4コース戦略の主に4つの分野で行うことができますが、自分でするのは非常に困難です。また、一人で雑誌などの情報を頼りにすることは、間違った解釈をして逆に問題を引き起こす恐れがあります。一番良い方法は、各専門家に分析してもらうことです。スイング・コース戦略にはゴルフプロ、身体能力にはゴルフに特化したPhysical Therapistやトレーナー、ゴルフクラブのフィッティングにはクラフトマンなどの専門家がいます。そして、その分析のもと、アドバイスをもらい、計画を立て、取り組みをしましょう。目標に向けてのステップが明確になると、練習やトレーニングの効果も飛躍します。
ここでひとつアドバイス。専門家を選ぶ際は、あなたの目標にしっかり耳を傾け、計画を立て取り組んでくれる方がお勧め。なぜなら、例えば、トレーニングをする際、「ドローボールが打てる身体作りをしたい」という目標と、「とにかく飛ばしたい!」という目標とでは、アドバイス内容、また必要な期間が異なってくるからです。目標ごとにアプローチが違うということは、スイングを直す時、クラブを選ぶ時も同じことがいえます。

次に、私が行っている2年前からの取り組みの一部を紹介します。元々私はプッシュスライス(ボールを右に打ち出し、さらに右に曲がること)がひどく、スコアがまとまりませんでした。しかし、練習といえば週に1回ぐらいの練習場での自己流道場。もちろん自分なりに練習していたつもりでしたが…。
真剣にうまくなりたいと思い始めてから、まず、ゴルフに必要な身体能力を分析。その結果、さまざまな問題点の中で、両股関節の内旋可動範囲(内側に脚を回すこと)が極端に少ないこと、またお尻の筋肉が弱いことが判明しました。ちなみに、これらの身体能力の問題によって引き起こされる主なスインング欠陥には、①リバース・スパインアングル(図1)②アーリー・エクステンション、が挙げられます(図2)。

そこで、この問題点を向上させるためのトレーニングプログラムを立て、冬のオフシーズンに集中してこの問題に取り組みました。こうした取り組を通し、身体の問題は少しずつ向上してきたと思います。また、ゴルフプロに診てもらい「クラブがリリースできていない」というスイング問題点を指摘され、その問題にも同時に取り組みました。
その結果、なんと1年弱の間に、飛距離が20ヤード伸び、ハンディキャップを目覚ましく向上させることができたのです。しかも練習量はそれまでとほとんど変わっていません。繰り返しますが、大切なのは自分のゴルフの分析、問題点の列挙、目標設定、それに対しての計画立てた取り組み方です。ゴルフは誰でも真剣に取り組み始めたときから上達し、楽しめるスポーツです。こうした取り組みをすると、あなたのゴルフライフもより楽しいものなるはずです。
図1
リバース・スパインアングル
バックスイング時に背骨の角度が左側に傾いてしまうこと(右打ちにおいて)。
右股関節の内旋可動に問題があると、右脚を軸に回転しづらくなるため起こりやすいスイング欠陥
図2
アーリー・エクステンション
腰や股関節の起き上がりが早く、ダウンスイング時にお尻がボールに近づいてしまうこと。お尻の筋力が弱いと、アドレス時に作った前傾姿勢をダウンスイング時に保てず、身体が伸び上がってしまうため起こりやすいスイング欠陥
本文中の股関節の内旋可動範囲、お尻の筋力の簡単なテスト(図3、図4)を紹介するので試してください。また、テストで問題点が発覚した時のため、手軽なエクササイズ(図5、図6)も紹介しますので参照してみてください。
図3
股関節の内旋可動範囲のテスト
仰向けに寝ます。両こぶしを両膝の間に挟み、足を広げます。この時に両膝がこぶしから離れないようにします。どこまで開くでしょうか? 身体の中心線とすねで作られる角度が30度以下の場合、内旋可動が低いと言えます

図4
お尻の筋力のテスト
仰向けになり、手を胸の前で合わせ、足を揃えます。そのままお尻を上げます。この時、太ももと身体が一直線上、スネは地面と垂直になるようにしますしょう。この状態から片方の脚を真っ直ぐに伸ばします。このまま15秒間静止してください。骨盤が傾いたり、身体がグラグラしたり、また太ももの裏が痙攣しそうになったら、お尻の筋力不足が考えられます

図5
股関節の内旋可動を広げよう-Stand hip Stork
右脚で片足立ちになり、図のように左脚を曲げます。この時ゴルフクラブまたは壁などでバランスを保つとよいでしょう(姿勢1)。胸そして右膝を真直ぐ前に向けたまま、ゆっくりと左脚を右側に回していきます(姿勢2)。脚が軽く疲れるまで繰り返します。反対の脚も同じように行いましょう

図6
お尻の筋肉を鍛えよう-Half Kneeing squat
図のようにヒザを軽く開き両膝で立ちます。ヒザの下にクッションなど置くと良いでしょう。おじぎをするよう、前傾姿勢になります。この時、腰が曲がらないよう(赤ライン)注意します。ゆっくりと元の位置に戻ります

ニューヨークデイリーサン掲載「ゴルフに意義あり」4-21-2011:向上の鍵は自己分析