4-2016「筋トレの問題点?」
先日PGAプロの方の為の講習会を行いました。近年ゴルファーがアスリート化し、過剰なまたは無駄なトレーニングで怪我やパフォーマンスの低下を招いているという内容を伝えたところ、大変な反響をいただきました。プロ達も実はどのようにトレーニングを組み立てるかあまり理解していらっしゃらず、ジムに行きとりあえず筋トレをするというプロが多いのには少々驚きました。
以前から私は筋肉に重点を当てたトレーニングに警鐘を鳴らしてきました。残念ながら現在のトレーニング業界は「筋肉」に焦点がいってしまっています。それはおそらく、筋肉重点思考が 簡単で視覚的にもわかりやすいからだと思います。例えば飛距離を伸ばしたいとしましょう。筋力が弱いから 筋トレしよう!体が硬いからストレッチをしよう!というのはわかりやすいですね。ストレッチの問題点は次回にお話しするとして、 ここではまず筋トレの問題点を考えていきます。ここで、筋トレとは筋肉繊維の肥大を目的としたトレーニングを指します。要するにジムなどで負荷をかけたトレーニングなどのことです。
問題点1、筋肉量が増えると必然的に可動域が減る。筋肉はゴムバンドのようなものです。より大きなゴムバンドになれば引く力が増えるのです。引く力は縮める働きです。ストレッチをすればいいじゃないという人もいるかもしれませんが引く力が伸びる力に変わるわけではありません。また、筋肉量が増えると体積が関節の動きを阻止します。お相撲さんが歩くときに足をまっすぐ運べず、外側に回しながら歩くのはそのためです。
問題点2、筋肉量が増えると身体のバランスが崩れる。ゴルフや野球のピーチャーなどに代表される細かいコントロールを要求される微細運動スポーツは感覚(身体のコントロール)が一番大切になってきます。そしてそれは我々が赤ん坊の時から少しずつ脳と身体とのやり取りの中で長年培って現在に至るものです。例えば、筋トレをして腕に突然のごとく500グラムの筋肉がついたらどうでしょう?体幹とのバランスは崩れるのはもちろんの事、脳がこうした身体の変化に適応し、自由自在にコントロールするまでは相当な時間を要します。その結果ちょっとした感覚のズレが生まれ、適応が完了するまでパフォーマンスが落ちることは言うまでもありません。
問題点3、怪我。無駄に筋力をつけることは関節に過度な負担をかけ怪我につながります。私のクリニックにもこうした理由が原因で膝や腰を痛めて来られるクライエントの方が後を絶ちません。よく関節を守るために筋肉を付けるなどど言う人がいますが、そんな単純な話ではないのです。
それから問題点ではありませんが、筋トレではヘッドスピードは上がりません。一般ゴルファーが筋トレをする主な理由が飛距離アップですよね。しかし、クラブの重さを支えられない、自分の体重を支えられないぐらい筋力が弱いといった特殊なケースを除き、筋トレでヘッドスピードアップは望めません。逆に変に筋肉をつけすぎてしまうと問題点1のように可動域が減りヘッドスピードが落ちてしまうこともあります。ヘッドスピードアップはスピードトレーニングをした方が得策です。
最近のエクササイズブームもあり、多くの方々がトレーニングに興味を持たれています。しかし、エクササイズは一概に身体に良いわけではありません。筋トレは確実に身体を大きくしますが身体を健康にする、または機能的にするとは限りません。ゴルフ世界No.1だったローリー・マキロイもこのところ筋トレに励んでいるようですが、最近の過度な筋トレは危惧をするところがあります。1−2年前に比べると肩周りの動きが不自然に感じるからです。次回はストレッチの問題点についてです。