ゴルフシーズン後半に急増するゴルフ肘
ニューヨークも涼しい日が増え、ゴルフシーズンも後半戦になりましたね。さてシーズン後半も最後まで頑張るぞと思いの方も多いと思います。しかし、シーズン中の疲労や組織へのストレスが蓄積され、怪我が増えてくる時期でもあります。
例えば、「ゴルフ肘」「テニス肘」(図1)などと呼ばれる腱鞘炎がその一例です。これらの怪我は「反復性疲労障害」や「反復性過多損傷」などと呼ばれますが、その名の通り、反復、すなわち繰り返しの負荷が蓄積され、最終的に怪我につながるというものです。
異常な力が加わり損傷をする怪我(例、事故などによる外傷)は怪我が治れば基本的に元の状態に戻ることができます。しかしながら反復性の怪我の厄介なところは症状が長引いてしまうことです。中には数ヶ月または数年痛みを抱え続けているという方も少なくありません。
長引いてしまう理由は①徐々に起こる損傷に気が付きにくい、②痛みがあるものの無理が出来てしまう、③回復のために必要な炎症が起きづらくなっている、④繰り返し損傷のため組織自体が弱体化している、⑤完治前に運動を行なってしまい再度損傷を引き起こすなどがあります。また、痛めている組織に負荷がかかる要因が体の他の箇所に起因することが少なくありません(例えば、姿勢の悪さ、首肩問題、骨盤問題など)。そのため根本的に治すためには部分治療だけでは不十分で、体全体の治療をしなければならないといったことも治りづらく、長引いてしまう理由にあります。
ではこのような腱鞘炎をどのように治すのでしょうか?疑念に思うかもしれませんがまず意図的に炎症を起こしてあげることが必要です。徐々に弱った組織は、回復に必要な炎症力が衰えていってしまっています。炎症が起きない組織は治りづらいので、特殊な器具や徒手療法を用いて血流を良くし、意図的に炎症状態を作ってあげることが大切です。
それにより、体に怪我をしたと誤認させ、「回復モード」にしてあげるのです。その後、正常な強い組織に戻していくために、弱っている組織が耐えられる程度の適度な負荷を徐々にかけることで回復させることが出来ます(図2)。最終的には、体全体のバランス問題などを修正することで完治するはずです。
ゴルフで起きる怪我のほとんどは反復性疲労障害です。キチンと治してあげることも当然ですが、普段から対応することでこうした怪我のほとんどは未然に防ぐことができます。毎シーズンゴルフを楽しむためにも、あれ?と思う前に対応することをお勧めします。ゴルフスイング問題も反復性疲労障害の一因ですのでスイング改善も忘れずに!(図3)髙田洋平
図1:肘の内側の痛みをゴルフ肘、外側の痛みをテニス肘と慣習的に呼びますが、ゴルファーの多くは肘の外側に痛みを抱えるケースが統計的に多い。
図2:ゴムの力を利用して適量な負荷をかける運動例
図3:ゴルフ肘に関係するゴルフスイング問題。例;肘がインパクトで過度に折曲がってしまう「チキンウィング」