TFCCの損傷
古閑美保選手が今季限りで引退を表明したというニュースがスポーツ紙などをにぎわしていますね。また、私も応援している有村智恵選手が、故障で今期の試合、練習の制限を強いられているようです。この2選手に共通するのが左手首の怪我、特に三角線維軟骨複合体損傷(TFCC 損傷)と伝えられています。この怪我は三角線維軟骨複合体(TFCC)という手首と前腕の間にある軟骨組織に起きる損傷 (図1)のことで、実はアマチュアも含みゴルファーに多い手首の怪我です。そしてこの怪我はあまり一般には知られていないため、アマチュアゴルファーは、単に筋を違えたぐらいだろうと思い、より悪化させ、最悪の場合はゴルフができなくなってしまうことも少なくありません。そこで今回は、このTFCC損傷に焦点を当て、なぜこの怪我が重大な影響を与えるのか、いかにして防ぐか、どのようにTFCC損傷の可能性を判定し早期に対処するのかについてお話していきたいと思います。
まず、なぜTFCCの損傷は重大な影響を及ぼすかについてお話しします。これは手首の怪我全般にもいえることですが、一つには手首の構造が挙げられます。手首は、手の複雑な動作を支えるためにとても複雑な構造になっており、5センチ四方にも満たないスペースに8個の小さな骨が配列され、それを支える靭帯や軟骨組織が所狭しとひしめき合っています(図1)。その結果、手首を構成するこれらの組織が一つ損傷するだけで、普段の動作が出来なくなってしまうのです。また、一回怪我をしてしまうと回復が非常に困難・不可能なのも大きな理由として挙げられます。筋トレなどによるリハビリ効果、手術による治療効果も限られています。
そこで防止がとても大切になりますので、次にTFCCの損傷の防ぎ方についてお話しします。手首は、体の力をクラブに伝える最終箇所であり、他の場所と違ってかばうことが難しくなっています。ですので、他の怪我にもましてより意識的にTFCC損傷の原因となりうる行動を避けることが重要です。損傷の原因は、アクシデント的なもの(例えば木の根を打ってしまった、転んだ拍子に手を付いてしまったなど)、スイング欠陥によって引き起こされるもの、繰り返しの負荷によって引き起こされるものなどに分類されます。有村選手などのプロの場合、その激しい練習量により繰り返しTFCCに負担がかかり、最終的に損傷につながるケースが多いですが、アマチュアに多いのは最初の2つになります。アクシデント的なことを防ぐことは難しいですが、スイング欠陥によるものはスイングを直すことで防ぐことが可能です。特に、アドレス時の手首の角度が、インパクトで大きく失われてしまうスイングは怪我をもたらしやすくなっています。具体的にはアーリーエクステンションがあげられます(図2)。
ダウンスイングからインパクトにかけて体がボールに近づく為に、上体を起こしてしまい、その結果手首が下向きに折れすぎてしまうことでTFCCに負担をかけてしまう訳です。アーリーエクステンション以外にも、手首に必要以上に負担をかけてしまうスイング欠陥がいくつもあります。なかなか自己判断でスイング欠陥を認識し直すことは難しいので、プロに指導してもらいスイングの問題点を直していくことが大切です。それによってTFCC損傷も効果的に防ぐことができます。
さて最後に、手首に痛みが走った場合、TFCC損傷かどうか簡単に自己診断し対処する方法についてお話します。実際TFCC損傷かどうかを厳密に診断するのはMRIでも難しいので、今回はTFCCの可能性のありなしをテストする方法をお教えします。
図3のようにテストしてみて、もし痛みやクリック音が起きる場合TFCC損傷の可能性があります。その場合、まず、安静にして負担をかけないことが第一。腫れなどがおきる場合は氷で冷やすことも有効です。損傷の度合い、箇所によっては自然に治る可能性もあります。決して無理をしないことが大切です。そして3-4ヶ月様子を見ても症状が改善されない場合は、外科的な手術が有効な治療法となります。残念ながら、リハビリなどによる改善は非常に限られているので、プレーに支障をきたす、または日常生活に支障をきたす痛みが常に伴う場合は、早めに専門医に相談することが大切です。
図3アーリーエクステンション
ダウンスイングからインパクトにかけて体がボールに近づく為に、上体を起こしてしまい、その結果手首が下向きに折れすぎてしまう。その結果、TFCCに負担をかけてしまう。
図4
テスト1:手のひらを上に向け、机などを持ち上げるように力を入れてみてください。
テスト2:握手をするように手を持ち、下向きに手首を折り曲げます。その上体で時計回り、反時計回りと手首を回転させてみてください。テスト1,2で痛みやクリック音が起きる場合TFCC損傷の可能性が考えられます。
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